文学と人生 反文学の世界 — 倉橋由美子の華麗なる文体
朴 銀姫
シラバスグループ
■授業のテーマ
反文学の世界 — 倉橋由美子の華麗なる文体
■授業の概要
明治大学でフランス文学を学んだ倉橋由美子は、創作初期にはサルトルの実存主義の影響を受けて、その形而上のイマージュをカフカやカミューの文体を模倣して、観念的な小説を書いた。1967年アメリカ留学から帰国した後、留学先で知り合ったアメリカの女性ヴァージニアをモデルに、写実的な手法で書いた小説『ヴァージニア』を始めとして、『夢の浮橋』、『城の中の城』、『交歓』など、一転して現実的な人物・事件を描いた作品を書くようになった。晩年になると、漢詩を作品に引用したり、或いは漢詩を基に物語を作ったりした。倉橋由美子の視線は日本や東洋に向けられていくのであった。晩年の作品である『よもつひらさか往還』と『酔郷譚』では特に漢詩引用が目立つ。本講義では、初期の作品「貝のなか」、長編『聖少女』、「ヴァージニア」、晩年のカクテル物語シリーズ『よもつひらさか往還』から「雪洞桃源」(陶淵明の「桃花源郷」の変容)などを取り上げ、倉橋由美子の小説文体の変化、生涯と作品世界との関係について考察する。
■授業の目的・ねらい
(1) まず「貝のなか」の全文、『聖少女』と「ヴァージニア」の一部分、「雪洞桃源」の全文を朗読して、ポイントになる単語や表現の意味とメタファーについて理解し、作品世界を把握する。
(2) 次は、作品の内容と構成などについて分析、比較する。
(3) 最後に、文学と倉橋由美子の人生及び文学と人生一般論について考えてみる。
(4) 成績は出席とリポートで評価する。
参考文献
よもつひらさか往還 (講談社文庫) 倉橋由美子 講談社
パルタイ 紅葉狩り 倉橋由美子短篇小説集(講談社文芸文庫) 倉橋由美子 講談社
聖少女 倉橋由美子 新潮文庫